Biography

瀬尾 和紀 Kazunori SEO

 世界中に多数いるフルーティストの中でも、この類まれなる超絶技巧を駆使し多彩な音楽性を持つことで一際注目を集める瀬尾和紀は、その活動内容からも非常に稀有なフルーティストの一人といえるだろう。

 1998年、パリ国立高等音楽院を首席で卒業すると同時に、ニールセン国際音楽コンクール、ジャン=ピエール・ランパル国際フルート・コンクール、ジャン・フランセ国際音楽コンクール、ジュネーヴ国際音楽コンクールなどで立て続けに優勝・入賞を果たした瀬尾和紀は、ただちにソリストとして世界各地より脚光を浴びることとなり、現在に至るまでフランスと日本を拠点としながら世界各地で演奏活動を行い、多くの音楽祭、フルート・コンベンション、並びに国際コンクールの審査員としても招かれている。
 日本においては1999年に東京都交響楽団とイベールのフルート協奏曲を共演してデビュー以来、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団、日本フィルハーモニー管弦楽団、読売日本交響楽団、札幌交響楽団、大阪フィルハーモニー交響楽団、広島交響楽団、九州交響楽団など各地のオーケストラからソリストとして招かれ、バロックから現代の協奏曲に至るまで幅広いレパートリーで共演を重ねており、また海外においても2006年、フランスの作曲家アンリ=ジャン・シュブネルが瀬尾のために書き下ろしたフルート協奏曲をシンフォニア・フィンランディアと初演。また2016年にはドイツ・ハンブルクの新進気鋭の弦楽合奏団《アンサンブル・レゾナンツ》から招かれ日本公演の際のソリストとして共演したほか、2020年にはロシアの名門マリインスキー歌劇場管弦楽団とペンデレツキのフルート協奏曲を演奏するなど、海外オーケストラとの共演も多い。

 レコーディング活動も精力的に行っており、2001年にハンガリーのニコラウス・エステルハージ・シンフォニアと共演した《レオポルト・ホフマン/フルート協奏曲集》(世界初録音を含む)がNAXOSレーベルよりワールドリリースされCDデビューを果す。その後もエラート=ワーナー・ミュージックより《シランクス~フランス・フルート近代作品集》(2001年)、同じくワーナー・ミュージックよりパトリック・ガロワ指揮、シンフォニア・フィンランディア・ユヴァスキュラと共演した《超絶技巧フルート協奏曲集》(2004年)などがリリースされ、いずれも音楽関係誌上などで絶賛を博している。
 2013年からは再びNAXOSレーベルに復帰し、ピアニストの上野真氏とのコラボレーションを中心に、モシェレス、ツェルニー、ベートーヴェン、ヴェーバーなどの作品集に取り組む他、W.F.バッハからピアソラなど、幅広いレパートリーにも着手。並行して自らも「Les Menestrels(レ・メネストレル)」と「Virtus Classics (ヴィルトゥス・クラシックス)」の2つのCDレーベルを立ち上げ、20世紀ピアノの巨匠ヴァルター・ギーゼキングが作曲した知られざる室内楽作品を発掘し録音するなど、フルートのレパートリーに留まらず独自のスタンスでプロデュースを手がけている。2022年には無伴奏フルート作品集のアルバム「モダン・タイムズの妙巧」が第60回「レコード・アカデミー賞2022」(音楽之友社主催)を受賞した。

 またフルーティストとしてのみならず共演ピアニストとしての一面も持っており、これまでに5枚のCDを録音している。特に師であるパトリック・ガロワとはこれまで3枚のデュオ・アルバムを Virtus Classics に録音しており、音楽雑誌などにおいてピアニストとしての評価も得てきている。

 この他、後進の育成活動にも熱心に行い、2009年から毎夏開催される、秋吉台ミュージック・アカデミー(山口県)を主宰。その他、名古屋音楽大学客員准教授も務めながら、2023年からはパリ・エコール・ノルマル音楽院教授として教鞭を執っている。
 これまでに京都芸術祭賞(1999年)、北九州市民文化賞(2000年)、福岡県文化賞(2004年)をそれぞれ受賞。